6月10日、レイにとって初めての動物病院へ行く日がやってきた。
2回目の混合ワクチンを打ちに行くためだ。
迎え入れてからずっと、この日のことが少し頭にあった。
病院という場所が怖くないか、クレートの中でパニックにならないか、注射を怖がって暴れたりしないか。
初めてのことだらけで、心配していたのはむしろわたしのほうだったかもしれない。
クレートに入れて、車で移動した。
クレートも、車に乗るのも、レイにとって今日が初めてだ。
どんな反応をするかな、と少しドキドキしながら出発した。
でも、病院の駐車場に着いた瞬間、レイの様子がガラッと変わった。
しっぽをぶんぶん振りながら、外の空気を思いっきり吸い込んで、早く行こうとでも言いたげにぐいぐい引っ張る。
さっきまでの緊張は、いったいどこへ消えたんだろう。
「あれ、怖がってたのわたしだけ?」と、思わず笑ってしまった。
受付を済ませ、待合室でしばらく待つことになった。
レイは膝の上にちょこんと乗り、そのままじっとおとなしくしていてくれた。
人見知りもなく、キョロキョロと周りを観察しながらも、落ち着いている。
待ち時間のはずなのに、全然苦にならなかった。むしろ幸せな時間だった。
診察室に入る前から、スタッフさんたちの黄色い声が聞こえてきた。
「かわいい〜!」「ゴールデンだ!」
レイは嬉しそうにしっぽを振りながら、ひとりひとりに愛想を振りまいている。
飼い主として、密かに誇らしかった。
肝心のワクチン接種は、あっという間に終わった。
注射針が刺さった瞬間も、レイはぴくりともしなかった。
「痛くないの?怖くないの?」
ケロッとした顔でこっちを見ているレイに、拍子抜けしてしまった。
帰り際、レイの足取りが重かった。
名残惜しそうに、何度もくるりと振り返る。
「もしかして、ここ気に入ったの?」
病院が好きな犬って、珍しいんじゃないかと思いながら、ふふっと笑った。
次の3回目のワクチンも、たぶんレイは平気だろう。
むしろ楽しみにしているのかもしれない。

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